パブリッシャーも頑張ってる!自社メディアのブランドセーフティを語ろう

6月13日(木)に「アドフラウド勉強会」を開催しました。本記事では、その勉強会で実施されたパネルディスカッション1:「パブリッシャーも頑張っている!自社メディアのブランドセーフティを語ろう」をお伝えします。
「アドフラウド」というバズワードは、広告主の目線で議論されていることが多いです。しかしながら、昨今の「フェイク広告」などの影響で、善意あるメディアがブランドイメージを毀損するリスクに直面していることも事実です。 今回は、そんな状況下で自社メディアを守るため、どのような努力をしているのかトップパブリッシャーに赤裸々に語ってもらいます!

モデレーター
池田 寛 氏(プラットフォーム事業部 副事業部長 ジ・アドジェネ / Supership)

スピーカー
柳田 竜哉 氏(デジタル・イノベーション本部 商品企画事業部 次長 / 朝日新聞社)
今岡 寛晴 氏(マーケティングプロダクト開発部 / クックパッド)
瓦野 晋治 氏(メディア事業部 マネージャー / ソシオコーポレーション)
小林 秀次 氏(メディアビジネスユニット 営業企画T部次長 / 日本経済新聞社)

イントロダクション

池田氏:まずはじめに、広告配信にはこのようなステークホルダーがいます。また、この図にはないですが、パブリッシャーはコンテンツを見ている読者、ユーザーとの関係も当たり前ですが重視しています。広告収益を増やしたいからと言ってユーザーとの関係値を壊すわけにはいきません。この広告配信に関わる人達全ての人がアドフラウドを理解していかなければいけません
アドフラウドというと広告主さんがお金を搾取され、パブリッシャーは搾取している側だと思われがちですが、そんなことはありません。 今回はパブリッシャーサイドで広告マネタイズしている4名をスピーカーとしてお招きし、どのような思いで広告業界の健全化に向けて取り組んでいるのかお伝えしたいと思います。
最近のインターネット広告は約1,8兆円で前年比約116%、総広告費の推移も見てみると、およそ6,5兆円と全ての広告推移は右肩上がりとなっています。
その一方でこのようなワイルドな広告もスマホで見ることが多いのではないでしょうか。過激な画像を使用した広告は、フィジカルなクリックを誘発するため収益性が高いのです。世間で話題になったこともあり、この類の広告は是正傾向にあるかと思います。
またパブリッシャーを悩ませている、読者やユーザーから搾取する詐欺広告はあの手この手でいたちごっことなっています。NHKさんの報道番組「クローズアップ現代+」では漫画村やフェイク広告が取り上げられ、さらに「暴走するネット広告」という本も出版され、「インターネット広告は大丈夫なの?」という空気感が去年から出ています。
広告宣伝費全体の企業別ランキングを見てみると、所謂ナショナルクライアントがメインでインターネットで見る広告とは少し異なっています。マスコミなどで騒がれることで、アドフラウドや、どこに広告配信がされているのか分からないことによるブランド毀損が懸念され、インターネット広告への出稿方法も更に見直されていく流れを感じます。

パブリッシャーサイドがやっていること

ads.txt や app-ads.txt といった自分たちの身分証明者であったり、sellers.jsonsというどのような商流で広告が配信されているのかトレースできることにも取り組んでいて、IAB基準できちんと透明性を担保して正しく広告を配信をしようとしています。
自分たちの広告について正しく見られているのか、安全性を証明する時代となりました。例えるなら広告主さんは、産地がどこなのか(どこに表示されるのか)、霜降りなのか赤身なのか(良質なのか)のように、安心安全に加えて、質まで担保されたA5ランクの黒毛和牛しか食べたくない、という状況になっているイメージです。 そんな中パブリッシャーさんたちはどのようにメディアを運用しているのか質問していきたいと思います。

昨今の『クロ現フィーバー』で変化は起きていますか?

小林氏:起きています。運用型広告は受け入れていないので先ほどのワイルドな広告は出てきませんが、日経にそぐわない広告は査閲の上、お断りさせていただいております。そんな日経に対しても「IASのタグを入れたい、計測ができるか。」と聞かれるようになり、メディアも計測できるのが当たり前、むしろやっていないのが問題という風潮になっています。日経だから信頼できるのではなく、他のメディアと同じように計測したい広告主が増えてきております。
池田氏:既にOpenRTBをはじめとした運用型広告による自由な買い付けを許容していない、和牛で言うA5ランクで運用している日経さんでも大丈夫なの?と言われるようになっているのですね。
瓦野氏:日経さんとは対極でOpen RTBで広告枠を買ってもらうのがメインで、『クロ現フィーバー』の影響は大きくあると感じています。広告1000インプレッションあたりの収益を指標にすると、今年1月から下がりはじめ、3月以降は全く上がらなくなるという、例年と異なる動きを示し、ブランド広告主の出稿意欲が減っていると感じるデータも出ています。先ほどのワイルドな広告を出すことになればファンや読者を突き放すことにもなるため、バランスを取りつつもどう収益を出すかが課題です。 小林氏安心安全なメディアにだけ広告を配信するホワイトリスト運用が進んでいます。信頼できるメディアだけというような極端な状況になっているかと思います。
柳田氏:日々ワイルドな広告と戦っています。『クロ現フィーバー』の影響としては、運用型の広告への社内外の関心や理解が高まっているのを感じます。きちんとしたメディアにとっては逆風というよりは、追い風であると思います。報道のおかげで運用型広告について説明する際に話が早っということもありますね。あと、弊社ではメディアとしてIASさんのサービスを導入していて、IAS基準で計測したアドフラウドを除外したり、ブランドセーフティな記事のみをターゲティングするというようなPMPの引き合いも増えているというような嬉しい話もあります。
池田氏:確かに「クロ現フィーバー」はネガティブなイメージがありますが、消費者やユーザーにとっても良質な広告が多くなりポジティブな側面もあるのではないでしょうか。クックパッドさんでは変化ありますか。
今岡氏:正直肌感としては大きな変化はありません。純広告だとブランドセーフティ、OpenRTBだったらPMPの話が増えたというのがありますが、流れを変えるような大きな振れ幅は感じていません。真面目にやっているメディアからしたら追い風になると思っていましたが、あまり収益が上がりませんでした。
取り上げられたことにより広告主側のお金の落とし方が変わってきたのか気になるところではあります。

今、媒体ブランドのブランドセーフティーを考える上で 一番困っていることは何ですか?その課題に対して、具体的に何を取り組んでいますか?

瓦野氏配信される膨大な数の広告クリエイティブを、運用担当者としてはチェックしなければいけないことだと思います。最近は中小の広告主ほどワイルドなクリエイティブやLPで入稿している印象がありますが、チェックの負担を減らすために全て切ってしまうと収益が上がらず、どうしても受け入れたい。しかし受け入れると、チェックが大変で、一ヶ月くらいほったらかしにしてしまうこともあるくらい、正直なところ前向きになる作業ではありません。
具体的なブロック手段としてLPのドメイン単位でのブロックがあるのですが、現状でも500近くリストしてある上に、無限に増えるドメインでブロックするのは限界があるのも困っています。
池田氏:ロケットニュース24だと、どういう基準でみているのですか
瓦野氏:記事に対して求めているクオリティレベルやメディアのコンセプトなどを参考に、クリエイティブ、広告から飛んだ先のLPを確認しています。
柳田氏:大きく分けると3つの問題があると考えています。
①クリエイティブ(訴求内容)の問題 ②不快なフォーマットの問題 ③強制リダイレクトなどの迷惑広告の問題
①はエロとかグロとか詐欺的な広告といった問題ですが、これはクロ現の放送の影響もあって、今は少し穏やかになっているように感じます。ただこれは、業界全体のモラルの問題でもあるので、引続きパブリッシャー側からも声を上げていきたいと思います。 ②についてもbetter Ads Standardsが日本にも適用されることになったこともありますし、健全化の方向に進んでいると思います。 ③については、パブリッシャーの担当者にとっては頭の痛い問題です。フロアプライスを高めに設定することである程度排除できることは経験的にわかっているのですが、フロアプライスを高めに設定することで、収益性を損ねることもあります。そういった問題を解決するために、オードリダイレクトなどが埋め込まれた悪意のある広告を事前に検知してブロックするGeoEdgeという会社のツールを今年の春先から導入しました。 池田氏:お金をかけてオートマティックに実施しているようですが、効き目はどうですか。
柳田氏:毎日結構な量が引っかかりますが、海外でのアクセスが大多数のようです。日本のSSPやDSPの皆さんはそれなりに頑張って対処してくれているということなのかな?と解釈しています。 今岡氏:レシピサービスなのでお母さんが子供と一緒に料理するときに見ます。過激なクリエイティブにはクレームが来て、100人以上見ているslackチャンネルにユーザーの声が飛んできます。そのため社内的にも悪く見られがちで、広告のマネタイズするものとしてはブロックしたり攻めの施策が打ちにくくなっています。ごく一部のクリエイティブが他のネットワーク広告自体も貶めていて苦労しています。
池田氏:どのように広告をチェックしているのですか。
今岡氏:外部に業務委託をしています。クリエイティブの弾く条件を取り決め、人が実際に見て弾いてます。
池田氏:なるほど、AIとか流行っているけれど実際は目視確認しているんですね。何を実施しているかというと、朝日新聞はベンダーを使いオートマティックに、ロケットニュースとクックパッドは人の手を介し人的に行っているんですね。3名は広告が出た事後対応になりますが、日経は事前に確認をしているんですよね。 小林氏:はい、掲載前のクリエイティブチェックは全件行っております。それも含めて3つ課題がありまして、 1:クライアント・クリエイティブチェック、広告出稿前に査閲担当者がきちんと確認しています。 2:社内の理解度を上げていくのが必要、ツールの特徴やブランドセーフやアドフラウドの理解度に差があります。 3:Botなど外部からの攻撃の対処、日経は海外に知られているせいか、botなどの攻撃も多く、常に対策に追われています。Botなど攻撃を受けて防ぐのも大変でいたちごっこになっています。
池田氏:何故海外に知られているから攻撃されるのですか?
小林氏:不正に取得したCookieデータを売買するなど、アドフラウドの目的は様々あり、「日経にアクセスするような読者」というCookieになりすましたいのでしょうね。 池田氏変な広告を出したくないが、変な広告のが収益性が高いと言うトレードオフの狭間で悩んでらっしゃるのですね。最後に、パブリッシャー視点で広告主側にお願いしたいことは何ですか。お金をかけて防いだりしていますが、これだけはやってほしいということがあればお願いします。
柳田氏:15年間近くデジタル広告の仕事ををやってきました。ずっと業界全体で右肩上がりでやってきて、テクノロジーも日々進歩していて、大変夢がある。そう思ってやってきましたが、今のように、モラルに反するような広告が普通に掲載されている状況は、危機的状況だと思います。一部のメディアだけが健全化に取り組んでいるのでは駄目だと思います。読者にとって、あらゆるメディやサービスはつながっていて、インターネットという、ひとつの場所だと思います。10年後にも運用型広告の業界が健全に発展しているかどうかは、業界みんなのモラルにかかっていると思います。
今岡氏:はい、柳田さんと同意です。
小林氏:怪しい広告主を受け入れるメディアもよくありません。インターネット広告に関わる人達はぜひ不快に思わない広告でマネタイズしていきましょう。
瓦野氏:Webもアプリも関係なく、あまりにひどい広告だとユーザーが離れる原因にもなり、柳田さんのおっしゃる通り、未来を見据えて業界全体で考えて行動していく問題です。クレジットカードでいう信用情報を事業者側で共同で管理するなどして、悪質なアカウントを作らせなかったり、停止させたりしないとネット広告の先は明るくないと思います。
池田氏:そもそも「インターネット」は誰もが自由に参加できて、好きな情報、コンテンツを表現でき、利用できるものです。それがインターネットの良さでもありますが、広告においては、プレイヤーが限られているテレビや新聞等と同じようには成立し得ない状況です。 「インターネット」の良さと広告のバランスを取る仕組みづくりをインターネット広告業界全員で考えていかなければなりませんね

Q&A

Q1:スタートアップやこれから立ち上げるメディアはブランドセーフティにお金をかけられませんがどう工夫をされていますか。

瓦野氏:ツールは何も入れられていません。まず、OpenRTBや配信量を保証しないPMPでは買い付け側で対応していて、メディア側では対応不要という現実があります。メディアがツールを導入しても、純広告タイプの案件でしか配信には利用できず、、、導入コスト以上に販売できる保証があるわけではありません。一方で、ツールを導入しないと売れないというジレンマを抱えているのも確かです。Googleなど掲載基準が厳しい広告を出しても問題ない面になるように、編集部と取り組んではいます。

Q2:アドブロックをどれくらいされているのかをどのように把握しているのか、個人的にどう考えているのか教えて下さい。


今岡氏:数ヶ月前にアドブロックをやっているかを調べたところPC、スマートフォンそれぞれ1%くらいでした。 池田氏:海外だと2割程度の方がやっているようですが、◯%に上昇したらアドブロックの対策を実施するなどどの基準でするのですか。 今岡氏:10%~20%まで上がってきたらアドブロックの対策が必要かと思いますが、サービスを運営している皆でメリット・デメリットを考えて意思決定したいと思います。

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