10分でわかる!日本政府が発表したデジタル広告市場の中間報告まとめ

内閣府は2020年6月16日、「デジタル広告市場の競争評価中間報告(案)」を発表しました。今回の報告書は、デジタル広告市場の実態を把握し、課題を抽出、それらへの対応の方向性を現時点での中間的な取りまとめを行ったものです。今後は、内外の関係者からの意見を募り、今年12月頃に最終的な取りまとめを行う予定で、それをベースに具体的な施策へ落とし込んでいくようです。日本のデジタル広告市場が整備されていく上で重要な報告書で、アドテクに携わる人ならぜひ一読したいものですが、原文は90ページ以上にもおよぶ長編作品となっています。今回は、時間がなくて読めない人でも10分で概要がつかめるよう報告書のポイントをまとめてみました。

政府が指摘していた課題を大きく分けると、透明性、データ活用、垂直統合、公平性の4点です。多くの課題は、大手プラットフォーマーが事実上市場を独占していることが原因で引き起こされているものと考えられます。

透明性

私たちの事業にも係るトピックですが、デジタル広告市場は急速な発展を遂げた一方で”透明性”の面に多くの課題を抱えており、その課題をカテゴライズすると4点が挙げられます。

1.アドフラウド

2.ブランドセーフティ

3.ビューアビリティ

4.ユーザーエクスペリエンス

すでにご存じの方も多いと思うので用語の説明は割愛しますが、例えば、「アドフラウドが〇割混ざっている」や「自分たちのターゲティングの精度は〇〇%」 「ビューアビリティは◯%くらい」といった形で品質を分かるように開示してほしい費用がかかったとしても品質が確保されたところに広告を掲載したいという”広告品質”を求める声が近年高まっています。 
それぞれの課題をどう捉えているのでしょうか。

1.アドフラウド

すべてのDSP事業者がアドフラウドが発生しないよう透明性を確保せよというころが述べられています。具体的には、パブリッシャーやベンダー等に対するデジタル監査の構築等を予定していて、これによりアドフラウドや ブランドセーフティへの対応を行っていくとしています。

報告書に記述はありませんでしたが、この監査とはJAAが「JICDAQ」を構想しており、独自の基準を定め認証するといった独立監査機関を日本でも策定しようという動きです。

アメリカのTAGやイギリスのJICWEBSの日本版となり今後この基準でデジタル広告の品質が測られると予測されます。

デジタル監査がなぜ必要なのか?

デジタル監査の構築はそれは現在のデジタル広告がレモン市場であり、ピーチ市場へと成長しなければ業界が発展しないためです。ピーチ市場とはレモン市場の派生で、商品の品質がわかりにくいレモン市場の中にピーチ(少し古くなると、表面が黒ずみ、鮮度の低下がすぐに見て分かる)を投入することで、買い手も品質を把握しやすくなるだけでなく、競争が発生し市場が透明性を確保するよう促進されていくことです。

2.ブランドセーフティ

そもそも最終的な掲載面が分からないこと自体がおかしいため何らかの工夫がなされるべきではないかという声が上がっているとのことが記載されていますが、報告書では具体的にどのような対応をしていくかは述べられていません。

従来の広告手法であるOOHで考えると、銀座の一等地に広告を出していると思っていたつもりが、実は歌舞伎町のネオン街に広告を出していたとなればユーザーに与える印象が180度異なるのは一目同然です。デジタル広告でも掲載面をきちんと把握する必要があり、ここではお金を支払う広告主もしくは委託した審査機関が確認をするべきではないかと個人的には思います。

3.ビューアビリティ

広告主からすれば、広告が配信されても、消費者に見られなければ広告の意味をなさないため、視認可能性のないインプレッション数は広告料金の算定基礎から控除されるべきという意見があり、ビューアビリティのレベルに対して、正確なモニタリングや定期的な情報開示を求める声があります。

デジタル動画広告の市場の伸びていくなか、「消費者が動画を見た」とする標準規格はIABにより定められています。今後、そういった規格に準拠しているか、透明性を持ってそれを証明できるかが重要になっていくでしょう。

4.ユーザーエクスペリエンス

ターゲティング広告について、7割の消費者が煩わしくネガティブに感じているようです。具体的には、求めていない内容の広告が表示されること、同じ内容が執拗に表示されることなどです。確かに「スニーカ」と調べると同じ商品や他のブランドの広告がウェブ上、SNS上インターネットを介し至るところに出てくるのは何だか24時間追跡されているようでゾッとしますよね。ユーザーエクスペリエンスを見える化し、広告主にフィードバックすべきとの意見があります。

透明性は質だけではなく、価格や取引内容の不透明さ(広告を出してユーザーに届くまでに多くのステークホルダーを介するため、どこにいくら落ちているかが分からない)、第三者による到達指標等の測定も課題であることが指摘されています。

データ活用

ここでは、大手プラットフォーマー(いわゆるGAFAと呼ばれるアメリカのIT企業)のデータ所有と活用を問題視しています。プラットフォーマーは、便利なサービスを無料で提供し消費者の生活をより豊かにする一方で、知らぬ間に個人情報をデータとして蓄積し、私たちの知らぬところで活用しています。

広告主や消費者に対してプラットフォーマーは十分な情報を開示していない、データがどのように活用されているのかブラックボックスとなっていることも課題として挙がっており、最終的にはデータの透明性に起因する課題です。

EUでは、GDPRや産業データを共有できる制度の構築、デジタル税を推し進めるなどいち早くデジタル社会のインフラ整備に努めています。今後日本もEUをフォローする形でデジタル戦略を行っていくのではないでしょうか。

垂直統合・寡占化

前述のデータ活用と重なるトピックですが、垂直統合と言われる、一つの会社がグループ企業として連携したりM&Aを通じ、事業の川上から川下まですべての機能を担い、結果としてマーケットを独占してしまうことを問題視しています。

広告主の利益を追求すべきDSPと、パブリッシャーの利益を追求すべきSSPの両⽅のサービスを提供する会社において、利益相反になる可能性が指摘されています。

また、以前YouTube上の広告枠はGoogle以外から買い付けることができましたが、買収したGoogleがそれを遮断しました。同様にInstagramもFacebookに買収されたことでFacebook広告に統合されました。このように大手プラットフォーマーによる垂直統合化・寡占化が進んでいる点について、公正取引委員会も注視しているようです。

また、プライバシー保護意識と相まってさらに寡占化してしまう構造を指摘しています。消費者目線だと個人情報の保護は安心してインターネットを利用できる良い兆しですが、プラットフォーマーもプライバシー保護を強化することで、結果として消費者の持つデータはとても価値が高くなる→さらにプラットフォーマーが競争力を増す→競合である日本のアドテク企業は打つ手がなくなってしまうといったプラットフォーマーの一人勝ちという悪循環の構造を助長してしまいます。

公平性

プラットフォーマーの広告配信に関するシステムやルール変更が事前に十分な説明なく行われるため、アドテク事業者が対応に苦慮している現状を指摘しています。

先月末にAppleが発表したiOS14もこの例で、モバイルマーケティングのステークホルダーを激震させる大幅なアップデートがありました。プライバシー強化の目的で変更した機能が、広告配信や広告成果のトラッキングに大きく影響が出るものとなったためです。詳しくは別ブログで記載しますが、プラットフォーマーのルール変更は、アドテク事業者のビジネスモデルをも脅かすものとなります。

今後さらに調査を進め、公平性を担保する対応を求めるだけでなく、独占禁止法違反となる疑いがある場合には、公正取引委員会において 的確な対処が判断されることを明示しています。
パブリッシャーに対してもプラットフォーマーの検索エンジンのアルゴリズムが突然変更されるといった同様の問題があり、パラメータ開示や事前に通知、モニタリングする仕組みを設けることが記載されています。

最後に消費者視点から個人情報の取得に関することも指摘されており、事前に説明がないにも関わらずデータを活用していることを不快に思っている人が大多数で、ガイドラインや透明性への取り組みを強化していかなければならないと締めくくられています。

今後の動き

「デジタル広告市場の競争評価」の中間報告は、デジタル広告市場の実態を把握し、課題を抽出したところまで詳しく記述されていますが、それぞれの課題に対する具体案はほぼありませんでした。今年の冬に最終報告が発表され、その後日本のデジタル社会の基盤を作りがなされていきます。

パブリックコメントを7/27まで募集しているので、アドテクに携わる事業者の皆さまは現状や見解、今後どのように取り組めばより良い社会となるか述べてみてはいかがでしょうか。あなたの意見が今後の日本のデジタル社会に変革を与えるかもしれません。

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